A2Z/山田詠美
お久しぶりです。本当にお久しぶりの更新です。最近読書をする時間がなかなか設けられません。いつもなら電車に乗る時間を読書に当てているのですが、最近は車で通っていて読書のペースが下がっています。悲しきかな。
さて今回は、
講談社出版
山田詠美さん作
A2Z です。
いつもの流れでまずはあらすじから
恋は知らない時間を連れてくる。
大人の極上の恋愛小説。読売文学少女賞の傑作。
文芸編集者・夏美は、年下の郵便局員・成生(なるお)と恋に落ちた。同業者の夫・一浩は、恋人の存在を打ち明ける。恋と結婚、仕事への情熱。あるべき男女関係をぶち壊しているように思われるかもしれないが、今の私たちには、これが形――。AからZまでの26文字にこめられた、大人の恋のすべて。
きました。山田詠美さん!
山田詠美さんの小説は三作目の読了となります。
私、女性が書く少しドロドロした小説って大好き。
描写対象は健全でなかったり、一部の方には受け入れられない状況であったり、だけど、こんなに人間らしい醜く、しかし美しい人物を描けるのは山田さんの特長であると思う。
山田さんは、「私だけが理解できる」と思わせるのが上手だと思う。他の作品で強く感じた感想だが、この「自分だけが分かる」という優越感は、人間の満たしにくい欲求を強く満たしてくれるものだと思う。
本作A2Zは、もちろんAtoZなわけだが
この作品の面白いところはAtoZ、AからZまでのアルファベットから始まる英単語が章ごとのテーマであることだと思う。話のなかでそれを登場させるのは高い技術力を感じる。
登場するのは編集者と作家ほかもろもろ。
あれ?前回と被ってる??笑
好きなんですよね!文章を日頃から駆使する人が主人公のお話って!対話文がとても素敵だから!!!!
さて具体的に感想を
夫婦の両方が別に付き合っている人がいるお話。一見ドロドロしてるように聞こえますが、これがぜんぜんドロドロしてない!
本書中の言葉を借りるなら、
この登場人物たちを取り巻く環境は、なるようになっちゃった結果である。妻は自由奔放な人妻でなんかないし、夫は浮気性ってわけじゃない。妻の交際者もスリルを求めてアフェアにのぞんではいないのと同様、夫の交際者も浮気相手としての気楽さを享受してるのでもない。他人から見たら、あるべき男女関係をぶち壊しているように思えるかもしれないが、今のこの人たちにはこれが形なのである。それぞれの自分勝手が交錯して均衡を保っているありふれた形。その中で、自分の思いだけはありふれたものじゃないと、皆、口に出さずに思っている筈。
そう、登場人物たちがこのような考え方だから自然とドロドロしない。みんな納得してるわけでもない、葛藤もあるわけだが。これがもしテレビドラマだったら絶対ドロドロしてる。絶対美しくない。この関係でこんなに美しく描けるのは小説、文字だから。山田詠美さんだから。
まあだからといって爽やかなわけではないし一つのドロドロもないわけじゃないよ一癖も二癖もある、楽しいねっ。
山田さんの作品は上品である。複雑な関係を、こんなに簡単に描いていること、いや、簡単なように描いていることというのが正しいのかもしれない。
夫婦関係がとても面白い。ぜひ読んでほしい。
素敵な言葉がたくさん詰まってた。
どうでもいいけど、たまにSNSで名言botだとか、ぐーぐるさんの検索補助でスペース名言なんて出たりするが、ワタシ小説におけるその調べ方、その配信の仕方はどうも好きになれない。小説中に素敵な言葉は確かにたくさん含まれている。しかし、それは話を追いながら目にすることで1番輝く言葉であり、名言と調べて即時的に手に入れてベストな形な言葉ではないのだ。
だから本、読んでほしい。好きなフレーズ一句とか描きたいけど、そういう意味でしないでおく。
(購読もしてくれたら嬉しいな)